やかまし村文庫<ブログ>だより №9

 おすすめの本📖ミニブックトーク

今回は、「ホタル」の本を3冊ご紹介します。

まず最初は、ホタルの写真絵本。栗林慧さんの本です。

栗林さんは、生物生態写真家。

独創的なカメラを開発し、斬新な写真を発表してきた方です。

【ホタル】

写真/栗林慧  総合監修/日高敏隆 株式会社リブリオ出版

5月下旬~6月初め「ホタルのすむ川の風景」「光のうたげ」

ホタルの光をとらえた美しい映像です。

西日本のゲンジボタルは、約2秒に一回光るのに対し、

東日本のゲンジボタルは、約4秒に一回光る。

その中間の中部地方では、約3秒に一回光るホタルがいるそうです。

ホタルの体のしくみはどうなっているのでしょう?

イラストと写真で解説してくれます。

メスたちが集団で産卵するようす~その理由…

ホタルの幼虫が育つようすがとてもよくわかります。

この本の中でも圧巻なのが、

幼虫が光りながら川岸を登っていく場面です。

カメラのシャッターを6時間開いたままで撮影、

カメラマンは、この場面と出会うまでに、20年かかった…

と書いてあります。是非、ご覧ください!!

 

次も、同じ栗林さんの写真の本です。

詳しい説明のついた「科学のアルバムシリーズ」の一冊です。

【ホタル 光のひみつ】

栗林慧  あかね書房

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「夜空への飛びたち」(五月下旬~六月下旬)から始まります。

ゲンジボタルのオスは、強く光り、つけたり消したり、

光を明滅させながら飛び回ります。一方メスは、草や木の葉の上に、

じっととまって弱く光っていて、オスはメスを見つけると、

一段と明るく光を明滅させます。するとメスも強い光を明滅させて

答えます。こうして、交尾をして卵を産みます。

産卵場所は、主に、川岸の岩や木の根元にはえているコケ。

コケのある場所は、水分が多く、日光も当たらないので、

卵を乾燥から守ってくれます。

卵からかえった幼虫は、そのまま下の川の水の中へ。

幼虫の水の中でのくらしや、地上へ出て成虫になる様子が、

丁寧に書かれています。

ゲンジボタルヘイケボタルのちがい」や、

「日本にすんでいるおもなホタル」の解説なども載っています。

 

こちらは、小学校上級向けの読物です。

6年生担任の原田先生が、クラスの子ども達と見た、

すばらしいホタルの光に感動し、ホタルに興味を持った子ども達の

素朴な疑問に向き合って、一緒に観察をした3年間の記録です。

【ホタルの歌】

原田一美・著  学研

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著者の原田一美さんは、徳島県の小学校の先生だった方です。

昭和41年5月の中頃、原田先生が宿直で学校に泊まり込んでいた

夜のこと。6年生の男の子三人が、先生をホタルとりに誘いに来ます。

三人に連れられて、下の谷へ行くと、なんと何千何百のホタルが

群れをなして飛んでいるではありませんか!

魂を奪われたようにホタルの光に見入っていた先生に、三人は、

「どっちがオスで、どっちがメス?」「このホタルは何ボタル?」

「ホタルはどうして光るんだろうか?」

「ホタルは何を食べるんですか?」と、次々に質問してきました。

早速、図書室へ駆け込んで調べてみると…

「日本にいるホタルで最も多いのは、ゲンジボタルヘイケボタル

ゲンジボタルは、きれいな谷川や小川にすみ、

ヘイケボタルは、田んぼのあたりにすんでいる」などが分かりました。

更に調べていくと、ホタルの一生は四つの時代に分けられ、

卵の時代は陸上  幼虫の時代は水中

さなぎの時代は土の中  成虫時代は空中

それぞれ違った場所にすむが、四つの時代を通じて光ることが

わかりました。

臨時学級会が開かれ、みんなでホタルの研究をすることになります。

「こんな活発な学級会は今まで一度もなかった」と先生は感動します。

これが本当の姿なんだ…そう思った先生は、

ホタルの研究を学級の柱にしていこうと決心します。

6年生43人を昼と夜のグループに分け、更に4班に分かれて、

観察日記をつけることになりました。

そして、ホタルがどこにすんでいるのか調べていくと…

昔上流に銅の鉱山があった東山川には、ホタルが一匹もいないこと、

また、川のゲンジボタルの発生は、

下流から上流へとだんだん移っていくことがわかりました。

ある時、ホタルが1分間に何回光ったり消えたりするか数えていると、

なんと、2秒間に一回、1分間に30回、ぴたっとそろって光り、

そろって消えるのです!何百何千のホタルが、どうして一緒に光り、

一緒に消えるのでしょう!?

でも、この素晴らしい同時点滅を上回る、更に素晴らしい

「ホタル合戦」を先生と子ども達は、目にすることになります。

光りの竜巻のような光景に、先生も子ども達も圧倒されてしまいます。

こうして、ホタルの光の素晴らしさを知るにつれて、先生は、

この自然を守らなければと考えるようになります。

そこで、クラスでの活動から、学校全体に呼び掛けて、更には、

村の人全員の力で、ホタルを守っていく活動へと広がっていきます。

数々の失敗を重ねても、辛抱のいる厳しい作業であっても、

子ども達は、心からホタルをかわいがり、

夢中になってホタルと向き合っていきます。

その熱意に、大人たちも動かされて、みんなで協力して、

取り組んでいくようすが、丁寧な観察の記録とともに伝わってきます。

まるで、自分もクラスの一員になったような気持ちで、

ドキドキしながら、一緒に考えながら、読み進めることができます。

是非、読んでみてください。

  ※表紙画像使用について、学研よりお返事をいただきましたので、

  掲載することができました。文庫にあるのは学研の本ですが、

  2008年に未知谷という出版社から復刊されています。