ぼく、この話好き!
ドナルド・ホール文 バーバラ・クーニ―絵
もきかずこ訳 ほるぷ出版
昨日、「にぐるまひいて」を読んだときのこと。
聞き終わると「ぼく、この話すき」というつぶやきが聞こえました。
3年生のY君でした。
この本は、私も大好きで、秋になると必ず読みたくなります。
10月、とうさんは、この一年間に家族みんなで作ったものを
なにもかも荷車に積んで、ポーツマスの市場へ売りにいきます。
4月にとうさんが刈り取った羊の毛、それをかあさんがつむいで
織ったショール、かあさんがつむいだ糸で、娘が編んだ
指なし手袋、みんなで作ったろうそく、亜麻から育て仕上げたリンネル
とうさんが切りだした屋根板の束、息子が料理ナイフで作った
白樺のほうき、じゃがいも、りんご、ハチミツと蜂の巣、
かぶとキャベツ、3月にかえでの樹液を煮詰めてとった
かえで砂糖の木箱詰め、がちょうの羽一袋…
市場へつくと、とうさんは持ってきたものを何もかも売り、
空になった荷車も、牛も手綱も何もかも売ると、
娘には刺繍針を、息子にはほうきを作るバーロウナイフ、
そして家族みんなのために、薄緑色のはっかキャンディを買った。
娘は針をもらうと刺繍にとりかかり、息子はナイフをもらうと
ほうきを作り、とうさんは冬中、新しい荷車の板をひき、
屋根板を切りだし、かあさんは亜麻をリンネルに仕上げ…
家族は、また一年の仕事にとりかかります。
美しい絵から、家族の営みが温かく伝わってきます。
こういう絵本に出会い、それを味わって心に刻み、
「ぼく、この話好き!」という言葉が口をついて出てくるなんて!
子どもに本を手渡す者として、こんなに嬉しいことはありませんね!